夫婦ですが何か?Ⅱ
そんな俺の思考を読んだかのように俺を覗き込んだ彼女がその声を響かせる。
「心配しないで・・・・見張っててあげるから」
「・・・・・・ありがとう」
「でも・・・・忘れないでよ?約束だからね?」
「お・・おお、・・・真面目にしなきゃダメですか?」
「・・・・当然でしょ?茜君があの日以降私を避けたのが悪い・・・」
さっきまでの労わるような態度から一変した彼女に見事怯む。
そして突きつけられている要求にも。
乗り気でない取り付けられた約束は絶対らしく、でも自分も彼女に頼っている部分があるからNO!とは返せない。
渋々受け入れる形で微妙な笑みを返すと、満足したらしい彼女が俺の横をすり抜けてエレベーターのボタンを押した。
留まっていたそれは簡単に入口を開いて、中に乗り込んで行く姿をなんとなく見つめる。
そして視線も絡まずその扉が静かに遮って本当に一人の空間になってしまった。
厄介な近所関係だ。
全部全部自分の撒いた種だと理解しているから溜め息を吐くことしかできず。
でも・・・彼女を巻き込むような事はしたくない。
いや、・・・もう巻き込んだからこんな事態か。
「仕事する気ねぇ・・・・・」
チラリと確認した腕時計で今日も遅刻だと理解しながら、まったくやる気の起こらない自分に落胆。
ああ、でも・・・せめて稼いで帰らないと、本気で離婚されるかもしれないと複雑な思いでマンションを後にした。