夫婦ですが何か?Ⅱ
これは・・・彼(榊)からという事なんだろうか?
それとも他の誰か?
誰かって誰だ?
そんな訳の分からない自問自答をし、封筒を無意味に確認しながらリビングに戻る。
中に入ればお気に入りのブランケットを抱きしめ床で眠ってしまっている翠姫。
愛らしい寝顔に顔を綻ばせながら抱き上げ、ベビーベッドに移すとリビングに舞い戻る。
そしてようやく問題開封だと鋏を手にして封筒を切りこんだ。
手にした感触で中身はやや硬めの紙だと予想していた。
その予想のままに指先で触れれば質感が光沢紙だと教えてきて、そう・・・写真だ。
理解した中身に忘れかけていた彼の所持していた写真を思い出し、自分が今封筒から引き出した写真にデジャブを感じた。
でも・・・・あれよりももっと強力に悪質で陰湿な印象で。
『これでも恐くないのかな?』
榊の言葉が頭をよぎる。
ある程度の事には動じない私でさえ一瞬で放心状態と化してしまった。
そして納得・・・。
彼の過剰な不安はここからもきていたのかと。
深く息を吐くとテーブルの上にそれらを置いた。
どれもこれもカメラを捉えていない私の写真。
日常を切り出して写されたような。
ストーカー・・・ってやつ?
こんな子持ちの主婦に物好きな・・・・。
そんな風に不明の犯人に呆れたように息を吐いたのに、困ったことに心音が速まる。
ああ、そうね・・・、これは少し・・・。
「【恐い】かもしれないわ・・・・」
ぽつりと本音を零してしまえば、一気に攻め入るように背後に悪寒を感じてしまった。
そして思い出すあの朝の事。
あれは・・・・、私を不安にさせないためだったんですね。
自分が撮ったものではないと言わなかった彼。
あの人は優しいから悪戯に私に恐怖を与えない。
でもきっと秘密裏にその対象を探しているんだろう。
そして・・・・・疑っている。
榊を・・・。
でも・・・・、
「・・・・・あの人っぽく・・ないなぁ」
それに・・・、わざわざ自分が撮ったものを本人に届けるとも思えない。
でもそれすらも作戦だというのなら別か・・・。
気がつけば恐怖心も薄れて他人事のように写真を手にしている自分は神経が太いのか。
ぼんやりと確認した写真は背景からこの近辺ばかりだと推測は出来る。