夫婦ですが何か?Ⅱ
翠姫とよく行く公園とか、コンビニとか、あとは見覚えのある些細な景観。
それにしても私の行動をよく張っている物だと感心もする。
ストーカー・・・ね。
私個人を求めてなのか・・・彼が懸念するような逆恨みからの物か・・・。
女の嫉妬なんて・・・。
一瞬浮上しかけた同フロアの彼女の姿に、自分の方が変な嫉妬を抱いていると貶して掻き消した。
そして一気にめまぐるしく重なっていく現状に眉根を寄せて突っ伏した。
「あー・・・・面倒・・・・・」
近所づきあいも、夫婦喧嘩も、ストーカー疑惑も・・・。
心底思う・・・・。
「会社勤務が心底気楽だ・・・・」
やっぱり・・・向いてないのかしらね?
ダーリン・・・。
苦笑いで主婦向きでない自分を嘆くと体を起こし、テーブルの上に広げた写真を綺麗にまとめて封筒にしまった。
「・・・・なんか・・・違和感・・・・」
「・・・・・あなたの希望だった筈ですが?・・・天ぷら」
「うん・・・いや、天ぷらに違和感感じたんじゃなくて、」
彼も帰宅した夕飯時。
箸で天ぷらを摘まんだまま彼が零した言葉に切り返せば、苦笑いで私を見つめてくる姿。
その反応はまだ恐る恐るの様子伺いで、言葉を発するのも勇気をもってだったのだろう。
まぁ・・・私は何も気にしてないのですが。
「千麻ちゃんが遠い・・・・」
「・・・・テーブル挟んであなたの真ん前に座ってますが?」
「心の・・・・」
「愛してるわダーリン」
「ウソくさっ!!何で棒読み!?」
「私なりに気をきかせて差し上げたのですが?嘘でも優しくされたいかと」
「その嘘が明確すぎて逆にヘコむよ千麻ちゃん」
「ああ、その分私は優越に染まります」
自分が歓喜に満ちる反応だと口の端をあげて見せると、今にも泣きだしそうなくらい眉尻下げた彼が捨てられた犬のように見つめてくる。
いや、私にそれが通用する筈ないでしょう。
「すみませんが自分の失態を棚に上げて私に罪悪感与えようとしてくるのはやめて頂けませんか?」
「いや・・・そんなつもりじゃ・・。ただ俺は千麻ちゃんと楽しく食事を・・・」
「私は充分に楽しんでますが?」
「ねぇ・・・自分の家なのに自由がない」
「私は果てしなく自由ですが?」
そう私は何の問題もなくいつも通りに過ごしてますが。
目の前の彼はどうやってもそんな風には出来ないらしく、何を言っても交わされる切り返しに苦笑いすら浮かばないらしい。