夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・俺はどうやったら許してもらえるんでしょうか?」
「成程、もう釣り上げた魚には許しを請うための方法を思考するのも怠りたいと?」
「っ・・・」
「そもそも・・・帰ってきて一度も私の髪の事にもふれないのはどうなんですかね?あなたの為に・・・いえ、あなたの【せい】で久方ぶりに軽くなった髪型は好みに合わないと?」
「いやっ・・ちがっ・・」
「好みに合わないそれには私への愛情も薄れると?」
「大好きだよっ・・・」
「・・・・」
「でもーーー」
「減点・・・・」
「えっ?」
「・・・・・褒めた言葉の後に『でも』とか比較するような接続詞を持ちだした段階で前者の言葉を否定しているんですよ」
「そうじゃなくて俺はっーー」
「すみませんが食事に集中したいのですが?」
終始笑顔携えての返答。
それでもこれ以上食事中に討論会をする気はないと彼の言葉を打ち切ると、絡んでいた視線を食事に下して言葉を封じた。
今は絶対に優位に立てる筈のない彼がもどかしそうに口を開いたけれどすぐに閉じ、状況理解しない翠姫の楽しげな声だけがその場に響く。
いつもなら落として上げる間。
それでもそれをせずに落としておくのは一種の戒めと嫌がらせだ。
正直・・・・もう怒りと言う感情は無いのですよ。
複雑な心情はありますが怒るのはさすがに違う問題だと思うし。
実際、今現在彼女とどうこうなっているわけでもない。
こうして私の目の前に存在して、無邪気な声を上げている翠姫には変わらず優しい笑みで父親の顔をしている。
だから・・・・・大幅嫌がらせです。
そんな感情のままに気がつけばじっと見つめていた姿。
私の指示のままに沈黙して食事をしていた彼だけれど、どうやら耐えられなくなったらしく。
「・・・・視線が痛いです」
「ああ、すみません。私からの熱烈な視線は歓喜の対象かと思いまして」
「いや・・大歓迎なんだけど【熱烈】には感じられない気が・・・」
「そう・・・・私の存在自体が目障りだと・・・」
「何で!?めっちゃ飛躍した解釈ぅ!?」
ああ、なんか焦る彼を見てるのって・・・癒しだ。
日中に自分の身に降り注いだ不穏さを全て掻き消すような時間。
罪悪感抱く彼には必死な時間なのかもしれないけれど今の私には酷く穏やかで柔らかい。
一切の悪意がない。