夫婦ですが何か?Ⅱ



今も私の一言にワタワタと気まずさと動揺を見せる彼を頬杖つきながら無表情で確認し、これ見よがしに息を吐いてみせるとゆっくり椅子から立ち上がった。



「ち、千麻ちゃん?」


「・・・・・食事も終わったので先にお風呂頂きます」


「あっ・・はい、ごゆっくり・・・」


「・・・・・ゆっくり・・・浸かってきましょう。長湯であればあるほど気が休まるのでしょう?あなたも」


「・・っ・・・」



自分の食器をキッチンに置きながら嫌味を落とせば、言い返したくても全てに嫌味を返す私に怯んでか口を閉ざした彼。


さすがにやりすぎだろうか?と思いつつも特別フォローはせずにリビングを後にすると洗面所に向かった。


入りこんで扉を閉めると顔を上げた拍子に見慣れない自分と視線が絡んだ。


鏡に映った自分。


やっぱり・・・・今までと印象が違う。


短くなった毛先に触れて、手櫛を通して感触でものそ短さを自覚する。



「・・・・・・馬鹿・・・」



嘘でも・・・・見た瞬間にフォローしてよ。


いや、彼だって色々迷って悩んでの帰宅だったんだろう。


フォローも忘れるほど今は私の感情のフォローが優先だと。


でも・・・・言って欲しかった。



短くても・・・・似合うって・・・。



言わなくても伝わるだろうなんて感覚はあなたには持ってほしくない。


鬱陶しいくらい感情を明確にする姿が好きな要素でもあるんですから。


夫婦になったからって・・・・おざなりになっていくのは・・・嫌。


ああ・・・・むしゃくしゃする。


何度鏡に映そうが、何度触れて確認しようが短くなったまま変化のない髪に治めていた憤りが浮上する。


ぐしゃぐしゃと八つ当たりの様に髪を乱して、もう見たくないと服を脱ぎ捨て浴室に飛び込んだ。


馬鹿だ・・・。


自分でした事に後悔して八つ当たりするなんて。


積み重なって重量感増すことに夫婦の強まりを感じていたのに軽くなったそれに心が焦る。


そう・・・怒ってるんじゃない。


私も・・・・焦っている。


複雑な葛藤のまま全く癒しのない入浴を適当に済ませ湯船から上がった。


全然長湯じゃない。


そう苦笑いで脱衣所と洗面所兼用の空間にその身を出した瞬間。



「・・・・・何をしているんですか?覗きですか?」


「いや、覗きならこんな堂々としてない」



扉を開けたと同時に視界に入りこんだ姿に、今更取り乱すでもなく冷静に切りこめば苦笑いで返された否定。



< 97 / 574 >

この作品をシェア

pagetop