まちこのerotica

くだらねえ日常のsomething



木曜の夜は、いつも魔法が解けた気分だった。


一日の仕事を終え、二時間半の乗車時間を耐え抜いた俺は、電車を降りる。
改札を出たあと、いつもの家路に着く
ーーーー機械時掛けの人形のように。


真千子との濃密な逢瀬など嘘だったみたいだ、とぼんやり思いながら。

火曜の朝から丸三日も置きっ放しだったマウンテンバイクに乗ろうと花壇の方へ向かった。


「あれ…?」


俺は目を疑った。
確かにその場所に駐輪したはずなのに、俺のマウンテンバイクが見当たらない。


「おかしいな…」


自分の記憶を疑うが、やはり置いた場所はそこだ。鍵だってちゃんと掛けた。

いつもより、駐輪している自転車があきらかに少ない。


もしかしたら……


昨日かその前の昼間、違法駐輪の取り締まりがあって、俺のマウンテンバイクは他の自転車と共に撤去され、別の場所に移されてしまったのかもしれない…


でも、そうだとしたら、それを通知する張り紙やらなんやらがされているはずだ。


これじゃ、盗難に等しいじゃねえか…


そんな事を呟きながら、外灯の下、歩道を駅とは逆方向に歩いてみた。




< 10 / 109 >

この作品をシェア

pagetop