まちこのerotica
「うちは、裕福な方が充実した余生を送る終(つい)の住処ですから、従業員も身元のしっかりした真面目な方しか採らないんですよ。
その点、長谷部さんはうちの希望通りですね。明日からもう、お願いしたいくらいですよ」
私の目の前に座るワイシャツにネクタイを締めた痩せぎすのハゲ頭は、この施設の最高責任者だという。
そして、横に座る白いポロシャツ姿の体格の良い脂ギッシュな男に命令口調で言った。
「キミ!長谷部さんを施設見学させてあげて。案内して」
「はい。分かりました!」
脂ギッシュは、にっこりと微笑み、立ち上がった。
「僕はここのリーダーを任されてるヤマダです。この仕事は大変ですが、とてもやりがいがありますよ。僕にとって天職です」
むさ苦しい外見のヤマダだが、歩きながら、私がリラックス出来るように気遣ってくれているのがわかった。
私に歩調を合わせてくれている。
私はヤマダにほのかな好意を抱いた。
なんとなく亡夫を思い出した。
男がイケメンである必要なんかない。
心が広い男、男は包容力(キャパシティ)こそが一番大切なのだとハセは身を持って教えてくれた。