まちこのerotica


老人達の居室、食堂、娯楽室。
どこもゆったりとした作りでで申し分ない。


娯楽室では、若い職員達が車椅子に乗った老人達の前に出て、童謡に合わせて手遊びをしていた。


どの老人も楽しげに遊戯に興じている様は、和やかで微笑ましかった。


一階から三階までヤマダはとても丁寧に説明をしてくれて、私の合格はほぼ決まったようなものだった。


(私もヤマダさんのようにこの仕事にやりがいを感じ、自分の天職にしたい……!)


1階に戻った頃には、そんな想いが強くなる。

【天職】なんて言葉は私の人生の中で、無縁だったのに。


21年前、ハセの希望で、私はそれまで勤めていた不動産管理会社を寿退社をした。


ーーフルタイムで仕事をしてると、真千子が疲れて、夜の夫婦生活がおざなりになるだろが。


新婚当時、ハセは眉をしかめ、真顔で言った。


ーーコンドームを使わなくて済むのがメチャ嬉しい!


そう言って毎夜のように私を抱き、その結果、あっと言う間に妊娠した。

新婚生活をもっと楽しみたかったのに。


それからは育児に専念した。
そして、下の子供が中学生になるのを機に電車で三駅ほど先の場所にある化粧品の注文受け付けのオペレーターのパートを始めた。


女性ばかりの職場を選んだのも、ハセの為。







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