まちこのerotica
「……そうか。真千子も大変だったな」
「はい…」
高波さんが柔和に私に微笑みかけた。
「人の死は辛いものだ。身近な者の死なら、尚更だ。しかも死は平等じゃない。
でも、人は運命には逆らえない。
俺は、これまでいくつもの永遠の別れに直面してきた。そのたびにこう思うことにしたんだ。
………ああ、そいつの人生という物語が完結したんだなって。
陳腐かもしれないが」
ハセの物語は、完結した……
私は胸の中で呟く。
不思議に安らぎを感じた。
「本当に残念だ。あいつはいい男だった…でも、あの頃、俺が若くて独身なら、絶対に真千子を譲ったりはしなかったよ。
世間には認められない関係だからこそ、俺は俺なりに精一杯尽くしたいと思っていたんだ」
見えない目で遠くを見る高波さんに、私は胸が熱くなる。
「ところで、真千子、
いくつになったんだ?」
高波さんが、そっと私の左手を両手で包み込んだ。
「46歳です…嫌だ、いつの間にかこんなおばあちゃんになっちゃって。それに、あの頃から10キロも太っちゃったの」
私の手の甲をマッサージするように撫でさする。
「お?馬鹿いうなよ!46歳なんて、ここじゃ小娘だ。
それに真千子は全然変わってない。
俺も歳を取って好みが変わった。女は太っているくらいが魅力的だ。
真千子はあの頃のまま綺麗だ。
………さあ、右手も出してごらん」