まちこのerotica
「…はい」
占い師に手相を見てもらうように、私は片方の手も差し出した。私達は座ったままで手を取り合う。
これからダンスを踊るかのように。
高波さんのグレーの瞳が熱を帯びてきて、マッサージは、二つの手のひらへと移っていく。
「手も綺麗だ。
真千子は本当に綺麗だ…」
「綺麗だなんて。そんなこと言ってくれるの、あなただけよ。ありがとう…」
「いや。俺は昔から嘘は言わない。こうしていると思い出すなあ…」
高波さんは、左右5本ずつの指を駆使して、私の両手のひらを愛撫し続けた。
押し付けがましくなく、優しく、巧みに。心地よいその感覚に私の唇は半開きになる。
「ああ……真千子のバニーガール、最高に可愛かったよなあ…」
高波さんの掠れた声を私は目を瞑りながら聴いた。
されるがままになりながら、場違いにも私の身体は反応を始める。
「声を出したっていいよ。誰もいないから」
高波さんが耳元で囁くのを、私は軽く睨んだ。
「高波さんたら…覚えててくれたの」
「もちろんさ。ほら、こうするが好きだったろ…?」
「ああ…」
手のひら。
そこは、愛する夫も知らない私のエロティカ。
【fin】