まちこのerotica
歩道の脇には、一定の間隔で小さな花壇が作られていて、黄色や赤や紫の花が植えられていた。
なんという品種なのか、1つもわからない。よく見る安っぽい花だ。
秋によく見る気がする。
きっと丈夫なだけが取り柄なのだろう。
[花を愛しましょう]
[影取町お達者ガーデニング倶楽部]
[ゴミを捨てるな。花が泣く]
[花壇の近くに自転車を置くべからず]
花壇ごとに立てられた小さな看板の手書きの文字。やたら達筆なそれを横目に読んだ俺は、馬鹿、と心の中で悪態を吐く。
暇な老人が花なんか植えて、
偉そうに小言言うな……
花壇のそばに自転車を置くのは、
有料駐輪場が遠いからだ。
時間短縮のために自転車を使うのに、駅まで5分以上も歩く駐輪場なんて無意味だ。
サラリーマンは毎日、時間に追いたてられていて、少しでも楽がしたいのだ。
花壇など潰して、駐輪場を作れば良いのに…
100メートルほど歩くと花壇はなくなり、道端は、緑色の網フェンスに腰まである雑草が茂るばかりとなった。
こんなところまで歩いてきたのは初めてだった。
「あ…」
車が1台停められそうな奥まったスペースに鉄屑の塊があるのが目に入る。