まちこのerotica



…………クリームシチュー。



二時間半、電車に揺られ疲れ切った亭主に差し出す晩飯がこれか?

ハッ、ご飯に合わねえから止めて欲しいメニューNo.1だ。

献立なんか息子の好みと自分の都合で決められる。


ま、いいさ…

週に一度、火曜の夜、俺は真千子と外食して、美味いものをたべているのだし。


それは俺の楽しみ、プチ贅沢でもあった。
新鮮なネタが売りの回転寿司。
分厚いのに、ナイフでスッと切れるサーロインステーキ。
ちなみに一昨日の夜は、特上の鰻重を食べさせてやった。


(真千子は早食いの大食いだ。好き嫌いなく、何でも美味そうに食う。若い女が大口を開けて、食い物を取り込む姿は実にエロティックだ。

俺の持論は、よく食う女は、性においても貪欲だということだ)


晩飯について文句を言い、夫婦喧嘩になったら、疲れるだけだ。


「おっ!なかなか美味いなあ!ミルクの風味が効いてる!」


俺は声を張り上げ、妻の背中に言う。
妻は振り返りもせず、寝室へ入っていったけれど、多分、機嫌は治ったはずだ。


こんな余裕が持てるのは、親父が残してくれた小さなアパートの家賃収入と、
真千子との『恋』のおかげだ。




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