まちこのerotica
次の日の朝も、俺はいつも駐輪する花壇の横にマウンテンバイクを置いた。
昨日、あんなに嫌な目になったのに、朝になったら、そんなことはすっかり忘れてしまい、結局、駅に着いたのはギリギリの時間だった。
1本電車を逃せば、通勤リズムに狂いが生じてしまう。
一瞬、大急ぎで有料駐輪場に入れるか、躊躇したものの、面倒になった。
どういう手続きを踏めば、停められるのかわからないし。
初めてだと、手前の係員がいるボックスで名前や住所なんか書かされるだろう。身分証明書に免許証の提示など求められて。
昨日は、たまたま違法駐輪自転車の一斉撤去する日に当たってしまったのかもしれない……と考えついた。
花壇のそばには、今日も数台の自転車が停められていたから、大丈夫だろう、と。
今日は、9時から本社で営業会議がある。
小さな営業所の所長である俺も、出なければならない大事な会議だ。
本社には真千子がいる。
真千子に逢いたい。
理屈じゃなく、
身体が反応してしまう。
俺にとって会議なんかどうでも良い。左遷された身だ。
先輩や同僚に長距離通勤を揶揄され、
『大変だな、頑張れよ』などと上っ面だけの励ましの言葉をもらいに行くようなものだ。
女で失敗した馬鹿な奴というレッテルはもう二度と剥がれることはないのだ。
朝一番にメールで、俺は真千子に今日は残業するように、と命じた。