まちこのerotica

[何でもいいから、仕事を作って社内に居残り、午後6時に資料保管室に来てくれよ]と。


三階にある資料保管室。
そこは図書館のようにスライド式の書庫があった。

昔の土地の地図や様々な契約書の控え。その他雑多な書類。
この会社はアナログ人間ばかりでコンピュータに強い者が少なく、IT化が全く進んでいなかった。

ほとんど人が寄り付かない化石が眠るような場所。
定時を過ぎればなおさらだ。

密会場所には、お誂え向きだ。


電源をいれてから、使用可能になるまで恐ろしく時間を食う古いコピー機が部屋の片隅に設置してあった。

しょっ中、紙詰まりを起こし、よっぽどでなければ、使われないシロモノ。

あれを真千子に使わせることにする。業務命令だ。


社内で、不適切な行為に及ぶのは、初めてではなかった。
付き合い始め、俺が本社の内勤だった時、二度ほどやった。


一度目は、今年の8月の頭くらいある日。
終業間際の午後5時半になって俺は、真千子におどけた口調で命じた。


『吉本さん!これ、5枚、16部ずつね、ソートにして、左上ホチキス止めね。ホチキスの角度はなるべく45度!急がないから、資料保管室のコピー機、使って』


(これはもち、事前に打ち合わせ済み。他の社員の目を欺く為の小芝居なのだ)






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