まちこのerotica
「親子だから仕方ないわよね、フフン」
約二時間後、マウンテンバイクを引きずって帰宅した俺を、パジャマ姿の妻は鼻の穴を膨らませて冷笑した。
独身時代、妻は奥ゆかしく、しとやかな可愛い女だった。
今では、幸久の前でも平気で俺を馬鹿にする。
出世を望めないこと。
僻地へ飛ばされたこと。
(妻は、異動になった理由を知らない)
結婚後、自分は15キロも太ったことを棚にあげ、俺の頭髪が薄くなっただの、枕の加齢臭がきつ過ぎるだのぬかしやがる。
2,3歳の頃、俺の膝で飯を食うのが習慣だった息子・幸久は、今や俺のことなんか完全無視だ。
こんな家族より、真千子の方が数千倍
いいに決まっている。
……もちろん、離婚などする気は、さらさらないけれど。