まちこのerotica
真千子が時々見せる、悪意のない無邪気さ。俺はその度に焦るのだ。
ーーバカ言え、
万が一、妻にでも見られたら、どうするんだよ……
それに、テレビドラマばりに変装したとしても、真千子がそばにいて、あのぽってりした唇が動く様を見ていたら、俺は性欲を抑える自信がない。
張り込みなんて、糞食らえとばかりにどこかのホテルにしけこんでしまうだろう。
仕事はそうそう休めないから、ここは禁欲的にやる必要があった。
暇だからスマホを取り出し、真千子にしょっちゅうメールした。
真千子は勤務中だけど、人目を盗んでこまめに返信をくれた。
仕事は暇なのと書いてきて、先輩社員の浅野万里32歳と去年中途採用された既婚男性社員・塚田がデキてるって噂だよ、などとゴシップネタを教えてくれた。
そのメールの文面は、真千子にしては珍しく、悪意に満ちていた。
俺もなるべく調子を合わせてやる。
浅野は顔立ちは整っているのに、性格の悪さが表情に滲み出ていた。勤続12年。
仕切り屋で万事に細かく、思ったことは口に出さないと気が済まない。
そのくせ御都合主義で、自分の有給休暇は最優先。
典型的なお局だ。
それにしても塚田と不倫とは。
三十代半ばで小肥りのとっつぁんボーヤだ。趣味が悪すぎる。