まちこのerotica
「君と不倫してしまったことで妻の大切さが分かった。過ちを犯したことを本当に後悔している」
心にもないことだが、浅野との関係をぶったぎるには、こうするしかなかった。
プライドの高い浅野は、つん、と肩をそびやかし、
「そうですか。承知しました」
と早口で言って俺の横を通り過ぎていった〜……
それからしばらくして、始まった俺と真千子の関係。
なんの確証もないのに、女の勘というのは、恐ろしい。浅野はすぐに気付いた。
俺はひそかに思う。
あの時、資料保管室の窓ガラスに写った人影は浅野だ。
左遷されてしまったのは、情事を目の当たりにし、嫉妬に狂った彼女が部長にチクったからではないか…と。
だとしても、恨むつもりはない。
あのプレハブ小屋みたいな営業所に飛ばされたからこそ、秘密の部屋を手に入れることが出来て、真千子とずぶずぶと快楽に浸れるのだから。
ーーところで。
駅前で刑事よろしく張り込みを始めて4時間。
なかなか犯人らしき人物は現れなかった。
昼休みに入り、真千子も同僚達と弁当を持って食堂に行ってしまい、メールも途絶えた。
俺はロータリーのベンチに腰掛け、コンビニで買った菓子パン片手に相変わらず助平な想像をして楽しんでいた。