まちこのerotica


正確にいうと半年後、幸久を身籠った途端、『豹変』した。


まず、煙草を辞めさせられた。
副流煙が胎児に悪い、という理由で。

営業職は人に気を使う、ストレスの溜まる仕事だ。


せめて、ベランダでも良いから吸わせてくれ、と食い下がると
「じゃ、あんたが赤ん坊生めよ!」
ブチ切れた妻は怒鳴り、俺は腰を抜かしそうになった。

妻が怒鳴ったのも、あんた、などと呼ぶのも初めてだった。


「悪かったよ…煙草やめるよ。怒るなよ…」


気が付くと、自然にへりくだっていた馬鹿な俺。

7年間の交際中、妻はうまく自分が気分屋だということを隠し続けてきたことに、このあと気付くことになる。


そして、俺は妻に頭が上がらない「恐妻家」となったのだ。


それから何もかもか妻ペースで17年が過ぎた。
もちろん、悪いところばかりじゃない。

妻は人付き合いも上手なしっかり者だ。アパートに入居している店子達とのやりとり。家計のことや子供の教育も、妻がすべてやっている。

それはそれで感謝してる。頭が上がらない。

が、化粧もしなくなり、髪もろくにとかさない妻に俺は女としての魅力を感じなくなった。



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