まちこのerotica
幸い、裕福な親父の実家が手を差し伸べてくれたから、俺達は生活には困らなかった。
老人と大嫌いな父親な姿が重なり、俺は自然とグレーの背中を目で追っていた。
どうせ、パチンコかなんかやりに行くんだろ…金もねえくせに。
くだらねえ。
老人は駅の改札口に続く階段の前を素通りし、花壇の方へと歩いて行く。
その先には、数台の違法駐輪自転車が停められていた。
そこにおけば、イタズラされてしまう危険があるのに、性懲りもない持ち主たちだ。
その中には『オトリ』の俺の修理したてのマウンテンバイクもある。
老人は、その辺りで歩みをとめた。
そして、周りをキョロキョロと見回す。
完全に挙動不審。
小さな駅前の平日の昼下がり。
エアポケットに入り込んだように人の姿はない。
やつの行動を気に留めるやつなど俺だけだ。
「何をするつもりなんだ…」
老人との距離は100メートルくらいあるから、俺は刑事よろしく目を細めてその姿を監視する。
老人は右手に抱えていた黒いポーチを開けて、なにやらゴソゴソとやっていたかと思うと、急に座り込んだ。
俺は身を乗り出す。
具合が悪くなったのか?