まちこのerotica
小銭か何かを落としたのだろうか?
…いや、違う。
あいつは怪しい!何かをしている!
無意識のうちに俺は老人の元に猛ダッシュしていた。
「おい!そこで何やってんだ!」
俺の怒声に老人は背を丸めたまま、振り向く。
そのシワだらけの顔に付いた生気のない瞳に一瞬、怯えが走ったのを俺は見逃さなかった。
「何やってんだって、聞いてんだよ!」
「…ああ?」
大儀そうに声を発した老人の右手には、鈍く銀色に光るものがあった。
キリ。
アイスピックだ。
幸久や俺が被害にあったパンク魔の正体はこいつだ!
「てめえ、何持ってんだ!それで、何やってんだよ!」
「うるせえな。なんでもねえよ。自転車が邪魔でせっかく咲いてる花が目立たねえからやってんだ」
老人は俺から目を逸らし、
「あっちいけ」
と手でしっしっとやった。
ハエでも追い払うような仕草に俺は心底腹が立ち、大声で怒鳴りつけていた。
「ふざけんじゃねえ!だからって、そんなもの持ち歩くなんて、病気じゃねえか!このキチガイジジイめ、警察に突き出してやる!」
「警察?」
老人の顔色が変わった。