まちこのerotica
子供の頃、うちにアンティークの【フランス人形】があった。
ガラスのケースに入った背丈50㎝くらいのその子には、【フランソワーズ】という名前が付けられていた。
幼い私にとって【フランソワーズ】は夢と憧れそのものだった。
真っ白な肌に大きくて透き通ったガラス玉の青い瞳。ちっちゃな鼻と口。折れそうなくらい細い首。
ウエストは尋常じゃないくらいくびれていた。
ピンクのオーガンジー素材のツバの大きな帽子には、白バラの飾り。
極めつけは、帽子とお揃いのピンクののドレス。ヒラヒラとしたレースが幾重にも重なって裾が大きく広がっている。
ところどころに金の刺繍が施されていて。
いつ見ても、溜息が出るくらいロマンチックだった。私もいつかこんなドレスを着てみたいと願った。
しかし、残念なことに【フランソワーズ】は私のものではなかった。
私の7歳年上の姉のものだった。
ピアノも自転車も姉のものだった。
両親は姉ばかり可愛がった。理由は姉が美少女で何をやっても1番だったから。
【フランソワーズ】は作文コンクールで特賞を獲ったご褒美に、父方のおばあちゃんから贈られたものだ。