まちこのerotica
ーー2ヶ月後。

夜、10時半。
スマートフォンが「Time to say Goodbye」のオルゴールを奏でる。

風呂から出たばかりの私は、タオルで髪を拭きながら通話ボタンを押した。


『おう。俺俺俺』

「ああ、ハセ。お疲れ様あ」


毎晩、一日の締めくくりみたいにかかってくるその電話。押しの強いその声の主を私は「ハセ」と呼ぶようになっていた。


『なあ、真千子。今度の休みの日、逢わねえか?……頼むよ』


「ええ?だ〜め!水曜日は高波さんと逢う日だもん。ハセだって、了解済みでしょ?」


『まあ…それはそうですけどぉ…』


「あっそうね〜ディズニーランドなら、行ってもイイけど?もちろん、ハセの全部驕りでね!」


『それだけは、勘弁してくれよお。ディズニー苦手だって言っただろ?ネズミやアヒルに会いに大行列作る意味、全っ然わかんねえし!しかも、俺、今、リボ払い嵩んでかなりやべえし!』


「借金持ちなのお?ハセ、それじゃ彼女出来ないって!」


私はきゃっきゃと笑う。
すっかり慣れ親しんだ私達の会話。基本的に人嫌いの私がここまでリラックスして話せるのは、同居する両親以外では、高波さんと、こいつくらい。

もっとも、慣れ親しんでいるのはもう、会話だけじゃない。





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