まちこのerotica
銭形平次は奥さん。
私は付き合い始めてすぐに、銭形の時だけ彼の声色が変わる事に気付いた。
もちろん、高波さんは私が気付いてると思ってない。
12歳年上の高波さんはいつも優しくしてくれる。
私と話す時は、小さな女の子と話す時みたいに甘ったるい口調だったりする。
奥さんには、冷たい声を出す。
それは、高波さんが奥さんにあまえているからだ。
夫婦の絆。
何年も連れ添った夫と妻。
私は、わきまえている。二番目でいいって。
嫉妬なんかしない。
でも、私の身体に火を着けておいて、そそくさとズボンのジッパーを引き上げ、背中を丸めてワイシャツの裾を直す高波さんの姿に、さすがの私も完全にしらけてしまった。
1人になった私はトイレの個室に再び篭り、バッグから20分前に脱いだパンティを取り出す。
急いでいた為にクルクル団子みたくなったそれは、なかなか元に戻せない。
「あ〜あ…なんなの、これ…履けないじゃない…家に帰るのに、スカスカのままじゃ、困るし…」
独り言を言う私の目から、いつの間にかポロポロと涙がこぼれ落ちていた。
悲しみとやるせなさ。
それは次第に怒りに変わる。