まちこのerotica
ひと月の間に亭主のいない気楽さにどっぷりと浸かるようになった専業主婦の妻の最大の関心事。
それは長男・幸久のことだった。
来春に大学受験を控え、大枚はたいて塾通いをする不肖の息子は、あと少しのところで志望校合格ラインに達しておらず、それで妻はキリキリとしていた。
それなのに当の本人は、インターネットのゲームやそこで作り上げたバーチャルな『友達』との交流に明け暮れ、受験生とは思えない生活をおくっていた。
俺としては、俺の亡父の遺産(わずか10世帯ほどの二階建てアパート)があり、金には困っていないとはいえ、たいして意欲もやる気もないのに、大学受験なんかやめてくれ…という心境だったけれど。
ブーン……
携帯のバイブ音が鳴り、俺は目覚めた。
何時だ?
ここはどこだ…あ、営業所の隠し部屋だ。
ブーン、ブーン。
かなり、しつこい。
頭上に手を伸ばして、気怠い余韻を邪魔する音源を手に取った。
妻からのメール着信だった。
「…高波さん、どうしたの?」
趣味の悪い茶色のカーテンで太陽の光の侵入を拒んだ部屋の中。
俺の裸の胸に頬を付けて眠っていた真千子が目を覚ました。