まちこのerotica
「……」
さすがにドン引きした。
アコースティック・ギターの音と即興で作ったメロディにのせて、聴かせてもらえば「素敵!」となるのかもしれないけど。
或いはハセが松潤なら、いいのかもしれないけど、
奴は、腹が突き出たむさ苦しいただのリーマンだ。
急にメールでそんな文字の羅列を読まされても、困惑するだけだ。
こんな詩は何通も送られてきたけれど、私は知らんぷりした。
それでも、ハセの真っ直ぐな想いは徐々に心に染みてくるものがあった。
でも、やっぱり、本命は高波さん!
高級なところじゃないけれど、美味しいお店を知っていて、ドアがあればサッと先回りして開けてくれ、タクシーを降りる時は「どうぞ」と手を貸してくれる。
大学生の頃、サンフランシスコに半年ほどホームステイしたという彼はレディ・ファーストが身についていた。
(サンフランシスコに行った話は、高波さんの『武勇伝』の一つで、酔っ払うと必ず出る。だけど、20年以上経った今、英語は簡単な日常会話しか聞き取れ無いらしい)
私の愛のやじろべえは、ある日は高波さんの方に傾き、次の日はハセの方、と気まぐれに揺らいでいた。