まちこのerotica
高波さんだってモロ丸出しだけど、首から上を見れば、眉を少し顰め、口からゆっくりと煙を吐き出す様子は、とてもダンディで哀愁があったりする。


「アイスピック…って、どこで捨てるんだ?不燃ゴミか?やたらなとこで捨てたらまずい気がして」


私は、ぎくり、とした。


忘れかけていたのに。
それはちょっと怖い話だった。

二週間ほど前。高波さんは会社を二日間も休んでまで、張り込みをかけて自転車をわざとパンクさせている犯人を突き止めた。


それは、70代くらいのお爺さんだったという。お爺さんは『アイスピック』を持っていて、それを使って、駅前の放置自転車をパンクさせていたらしい。


高波さんも高波さんの息子さんも被害にあっていて、その事で怒り心頭だったから現場を抑えた時、思わず、お爺さんを殴りつけそうになったという。


「…でも、俺は自分を抑えたよ」


高波さんはニヒルに笑い、煙草を灰皿に押し付けた後、語り出した。


あ〜あ〜…まただ。まだ充分長いのに消す。煙草高いんだから、もっと大事に吸ってよ…


とか瞬時に思う私。






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