まちこのerotica
ハセの喘ぎ声は、私よりでかい。

ふがー、ふがーみたいな。


四畳半くらいの風呂場に、そんな動物の鼻息みたいな声がめちゃこだましてた。


熱い湯が苦手な私は、先に風呂から出た。
ふと、ソファに置いた自分のバッグが目に入る。


(アッ……!)


あるアイデアが閃いた。


「あっち〜でも、風呂はいいなあ、
俺、普段、シャワーばっかだから…」


独りごち、バスタオルで脇の下をゴシゴシ拭きながら出てきたハセの前に、ヨレた白いバスローブ姿の私は立ちはだかった。


「手を上げて!」


ハセの裸の腹に、銀色に光る鋭利なそれを突き出した。


「ゔががっ!!」


突然の私の凶行に全裸のハセは、目を剥いて驚き、両手で『バンザーイ』するみたいなポーズを取りながら、蛙が潰れたみたいな悲鳴をあげた。


その間抜けな仕草に私は、大笑いしてしまい、もっと悪ふざけしたくなってしまった。

今度は、『アイスピック』の先端を自分の口元に当てマイク替りにする。

ニヤリと不敵に笑って、喋り出す。


「それでは吉本真千子、歌います。アイスピックで恋をして。お聴き下さい!」



♪道ならぬ恋だけど…

貴方となら、いいのよ〜

いつか覚める夢だからあ

今夜は、もっとちょうだい〜

アイスピックの先端みたく〜

銀色に光るそれで、痺れさせて〜

ああああ、
あんまり動かないで〜

本当に刺さってしまうじゃない……







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