まちこのerotica
即興で作った歌詞と出鱈目なメロディ。
さすがのハセも口をあんぐり開いたまま、呆れ顔。
こんなにハイなのは、高波さんが私を軽井沢に誘ってくれたから。
嬉し過ぎて。私は気が変になってる。
でも、ハセもしばらくフリーズしたあとニヤニヤと笑い出した。
「へへ…なかなかいいじゃん。こういうの嫌いじゃないよ、俺」
ハセは、私よりもっと変だ。素のままで。
「ありがとう。じゃ、これあげるう!」
私はアイスピックを持ち替えて、ハセに握らせた。
数日前に、高波さんから押し付けたアイスピック。
こんなもの持ってて、交通事故にでも遭い、身元確認の為に持ち物検査されてしまったら、誰もが犯罪を疑うよ。
危険人物と見なされ、病院関係者が警察に通報するかもしれない。
そんなトラブルはゴメン。
だけど、高波さんは屈託なく『それ、捨てといてくれよ』と私にアイスピックを寄越したのだった。
昔人間だから、面倒なことは奥さんや部下に当たり前のように押し付けてるんだろうな…
私は、煙を吐きながらそれでも笑顔で
『はいよ!』とキップのいい江戸っ子みたいな返事をして受け取った。
でも、私だって、燃えるゴミが何曜日なのか知らない。
だから、ハセに「ハイ、プレゼント」と言ってお荷物をあげた。