まちこのerotica
図星を指され、内心面白くなかった。
愛人と妻の話をするなんて趣味じゃない。
「ああ…つまんねえことで、わざわざメールなんかしてきやがって…」
訊いたくせに、真千子はその答えに反応せず、俺の肩口に頬をこすり付けてくる。
「ねえ。高波さん。もう夕方の3時よ。どうする?」
それは、真千子が腹が空いた時の可愛い癖だった。
朝、コンビニで買っておいたサンドウィッチとおにぎりを食べたきりだ。
それから、ずっと真っ裸のまま、絡み合っていた。
欲望の満たされた俺は、心地よい気怠さしか感じていなかった。
真千子の言葉でやっと、昼飯を食っていないことに気付いた。
彼女は、決して自分の口から空腹を訴えたりしなかった。
そういうことをはしたないと思っているらしかった。
それに、何度俺と関係を持とうと、俺のことを『高波さん』と呼んだ。
行為の絶頂で『高波さあん!』
と叫ばれるのは、実に変な感じなので、前に1度『弘って呼べよ』と言ったことがある。
すると真千子は、首を振り、高波さんがいい、と言った。
『下の名前で呼んでしまえば、深みにはまりそうで怖い。この恋はブレーキを掛けなくちゃいけないから…』
俯きがちに言う真千子がいじらしく思え、俺は、そっと彼女の頭を抱き寄せたーーーー