まちこのerotica


人目を気にしなくてよい土地にいる開放感からか、高波は買い物カゴを持たない左手で時々、真千子の肩や腰に触れたりしている。

その触り方が痴漢並みに嫌らしくて、物陰から見ていた俺は、反吐が出そうになった。


それなのに、真千子は嬉しそうにしてる!馬鹿か!


夫婦にも恋人同士にも絶対見えない年齢差カップル。いかにも訳ありなオーラを辺りに撒き散らしていた。


俺は胸ポケットから黒サングラスを取り出し、中折れ帽を目深に被り直す。

奴らの買い物カゴの中が気になって仕方がなかった。


危険なのは承知だったけれど、顔を見られないように素早く近づき、すれ違いさまに中を除く。


ビニールに包まれた玉ねぎ、人参、じゃがいも。ハ○ス バーモントカレー(辛口) パックの豚コマ(200グラム)、赤ワインのボトル、○印北海道チーズ6P入り。


ちなみに一瞬で品物を捉える技は、大学生の時、大手宅急便の仕分け作業で培った。
ベルトコンベアーに載せられた荷物を、素早く地域ごとに分ける。集中力と正確さが求められるこの仕事は、俺にとって天職だった。








< 80 / 109 >

この作品をシェア

pagetop