まちこのerotica
男って好きな女には、何か理由をつけて贈り物をしたりするものじゃないだろうか?
気を引くって意味で。
それがない高波さんには、なんとなくそこはかとない吝嗇(けち)さを感じてしまう。
抱っこされたまま、電気の点いていない真っ暗なベッドルームにヨロヨロと進む。そして、私は中央に置かれたマットレスの上に、ドサリと勢いよく降ろされた。力尽きた感じで。
「きゃあ!」
また悲鳴を上げた同じタイミングで、高波さんがパチリと部屋の隅にある間接照明のスタンドライトを点けた。
(………やだ!な、何これ?)
部屋の全貌がわかった瞬間、私は絶句した。
私が横座りしているのは、ど紫色のベッドカバーが掛けられたダブルベッドの上。
同色のカーペット。
最も異様なのは、壁に据え付けられた人の背丈ほどもある大きな紫色の十字架。
いや、それは十字架じゃない。下のところが2つに分かれる。大の字だ。大文字焼きみたいな。
それはクリーム色の壁にうっきりと浮き上がり、ダブルベッドよりもその部屋の主であることを主張している。
両腕両脚が来る先端には、チェーンの付いた黒革の拘束具が取り付けられていた。
そこは世にも妖しい『紫の部屋』だった……!
あまりに奇妙な光景に、私は戸惑いを隠せなかった。