まちこのerotica
(えっ…ハセ?)
私が唖然とした時。
ダーン!とすごい物音がして、ベッドルームのドアが開いた。
逆光になった黒い人影だけで、それが短躯のブ男だとわかる。男はドアを蹴破った為に、勢いよく部屋に転がりこんできた。
それは確かにハセだった。
「あっ!」
私は戦慄した。
ハセの右手にはアイスピックが握れていたから。
それは間違いなく、私が高波さんから預かったあとハセに押し付けたものだった。
「真千子…お前…なんだよ、その格好…丸出しじゃんか…」
ハセは宙に浮かぶ私を憐れむような目付きをし、立ち尽くした。
「イヤ!変な目で見ないで!ここから出て行ってよ!」
ハセにこんな姿見られるなんて…
ものすごく恥ずかしい…
私は首を振りイヤイヤをした。
自由に動かせるのは頭だけだ。
「長谷部君……
まあ、落ち着けよ。話をしよう」
高波さんがガウンのベルトを締め直しながら、部屋に入ってきた。
唇の端には葉巻。東南アジアっぽい不思議な香りが漂う。高波さんが葉巻をたしなむなんて初めて知った。
高波さんは、私とハセの間に立つ。
私は高波さんを見下ろす形になり、つい彼の薄くなった頭頂部に目がいってしまう。