まちこのerotica
通勤途中、倒れた。
突然の心臓疾患。避けようがない死。
47歳の若さだった。
課長という役職を得た代わりに、サービス残業が続いていたから、過労死に近かったと思う。
『いつから死ぬなら、俺は真千子の上で腹上死してえ』
昔から口癖のように言っていたのに、ささやかな願いさえ叶わなかったことが可哀想でならない。
私はコールセンターのパートを辞め、泣いてばかりいたけれど、一年が経ち、ようやく少しずつ涙が乾いてきた。
思い出すだけではダメだ。
一番無念だったのは、ハセ本人なのだから。
おかしなことだけれど、私は夫のことを『ハセ』と呼び続けた。
子供達の前ではパパ、と呼んでいたけれど。
ハセは、いい夫だった。
私に隠れて、ちょこちょこ飲み屋の女と遊んだりしていたけれど、決して深入りすることはなかった。
ハセは分かり易かった。
後ろめたいことがあると、罪悪感なのか、私にとても優しくしてくれたから。
それより何より、若い頃、あんなにふしだらで淫らだった私なのに、軽蔑せずに私と同化してくれた。
私の黒歴史も何もかもを許してくれ、受け入れてくれた男。