まちこのerotica
ハセも変なやつだったから、私達は変り者同士で結果、プラスの方へ向かうことが出来たのだと思う。
総じて幸せな結婚生活だった。
ハセは結婚記念日を忘れることはなかったし、私の誕生日には毎年、紅い薔薇の花束をキザにプレゼントしてくれた。
それも100本とか。
何日か花瓶に挿して楽しんだあと、私はそれを壁に吊るし、ドライフラワーにしようとするのだけれど、無残にカビさせてしまうのも毎年同じだった。
それが、去年に限って上手くいった。
結婚して初めて。
でも、そのドライフラワーをハセが見ることはなかった。
私が薔薇を吊るした日に、凶報が入ったのだから。
最初で最後の赤黒い枯れ花の束を棺の中に入れ、愛する夫を黄泉の世界に送りだした。
そして、小さな仏壇を買った。
真ん中には、ハセの写真。
毎朝毎夕、手を合わせる。
「面接、言ってくるね」
今朝、私は告げた。
そして、とても慌ただしく仏壇に背を向けた。
写真のハセは口元にニヤリとした笑いを貼り付けたまま、私を送り出す。
ハセは多額の生命保険金を私達に遺してくれた。
次男を卒業させ、質素にやれば生きるのに困らない金額。