私の愛した未来
学校への坂を上がって行くと
徐々に心臓がバクバクと鳴るのが分かる。
怖い。
セミナーだから必ず林くんに会うことになる。
いくら間に未来がいるとはいえ、昨日のキスのことを思い出さないわけではない。
「……無理だったら…言えよ。」
「えっ?!」
突然未来が私の顔を覗き込む。
「…セミナー…まぁ、大丈夫なわけないよな…。」
「…ぁっ…だ、大丈夫!大丈夫!」
これ以上、未来に心配かけるわけにはいかない。
「…アホ。心配させろ。」
「え???!!」
こ、心の声が聞こえてるの?
「春子の考えてることは何でもお見通し。」
「そ、そんな…」
「本当に、無理だったら言えよ?きっと、林のやつはなんともない顔で今日も来る。」
…。
それは、私もなんとなく思う。
ここ最近、林くんが私の知ってる林くんとは程遠い気がする。
「…守るから。」
ボソッと先を歩く未来から声が聞こえる。
「えっ。」
「二度と昨日みたいなことが起きないように守るから。」
…。ズルい。
優しすぎるよ。
好きが溢れちゃいそうだよ。
「…ありがとう…未来…」
ゆっくり歩いていても
学校にはついてしまう。
「無理して頑張るな。いいな?」
「うん…。」
「よし、行くぞ。」
未来が私の大好きな笑顔を見せる。
その笑顔に励まされて
セミナーの教室に足を踏み入れる。