私の愛した未来


家に着いて私がドアを開けると
お母さんが勢いよく駆けつけた。

「おかえり!春子っ!あのね、未来くんが…って…あっ…」

お母さんは私の後ろにいる未来を見て驚いている。


「こんばんは。お久しぶりです。」

ぺこりと頭を下げる未来を見て懐かしむお母さん。

「さっ、未来くん上がって!お父さんも会いたいと思うの。」

「いえ…今日はこれで…」

未来は帰ろうとしたけど
それは私がさせなかった。

「未来…?上がってよ。」

ギュッと未来の制服の袖を握る。


「春子?」

私の大胆な行動に驚いてるみたい。

「だ、ダメかな…」

「いや…じゃあ…少しだけ…。」

「いらっしゃい未来くん。」

お母さんに連れられて未来をリビングに通した。

「お父さんただいま。」

「おぅ、おかえりー。…え、み、未来くん?」

新聞を開きながら目線を私に向けたお父さんは
私の後ろの未来を見て完全に驚いている。

「ご無沙汰しております。」

「…よく来たね…大体の話は聞いてるよ。」

え…?
お父さんとお母さんは何か知ってるの?


「あっ…あのおじさん…」

未来はお父さんと私を交互に見て何やらお父さんに伝えている。


するとお父さんは しまった、と言うように話をそらし始める。

「…まぁ、久しぶりだな。今日はうちでご飯でもどうだ?」

「いえ…」

「そーよぉー!一緒にご飯食べましょうよ!今日はすき焼きなんだから。」

お母さんも未来をご飯に誘い出す。

「…じゃあ…おじゃまします…。」

「よかった、ちょっと春子!ボーッとしてないで早く着替えて来なさい!手伝って!」

「あっ、う、うん。」


全く状況が読めない…。


家に入った途端
お母さんは未来の話をしようとしてたし
お父さんは何やら知っているようだし。

でもそれは私には秘密なの?


どうしてなんだろ。


知らないのはまるで私だけみたい。



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