私の愛した未来

いつものようにTシャツに着替えて部屋を出ようとする。

…。
やっぱりパーカーでも羽織っていこ。

両親の前では気にならないけど
好きな人の前なら話は違う。


Tシャツに短パンって…女子力ないかな…?


私はかけてあったパーカーを羽織ってリビングに降りていく。

キッチンに行くと腕まくりして料理を手伝っている未来がいた。


「み、未来…?」

「ん?」

「何してんの…?」

「ちょっと春子ー、未来くんてば すっごい気がきくのよぉ!手伝ってもらっちゃった!」

お母さんのテンションが上がってる。

「そう、なんだ…。」

「春子ー、お皿並べちゃって!」

「う、うん…。」

仕方なくお皿をテーブルに並べると
お父さんがテレビをつけた。

『今日の特集は!今若い子に大ブーム!国民的グループのスプリングchild!』

テレビから飛び込んできたのは
里奈が言ってた 未来が入ってるらしいグループ名。

今まで気にも止めなかったのに
テレビにくぎ付けになる。

私と同様にお父さんもテレビを食い入るように見ている。


テレビに映ってるのは
間違いなく今、うちのキッチンで野菜を切ってる未来だ。


違いといえば
テレビの未来は メガネはかけてなくて、今より若干遊んでる毛先。

言われてみれば同一人物だけど…


目の前にいる未来の方が テレビの中よりカッコいいと思う。


…。


特集では グループのイベントに長者の列が出来、女の子達が嬉しそうに笑ってる。

みんな、未来のグループのファンなんだ。


「…春子?」

後ろから未来の声がして跳ね上がる。

「えっ、え?」

「いや…ご飯出来たよって…座らないのか?」

「えっ…あ、す、座る、」


テレビに夢中で全然気づかなかった。

私の横に未来が座って
4人でのご飯が始まった。

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