私の愛した未来
「未来くんは、頑張ってるねぇ。」
お父さんがテレビを見ながら呟く。
「えっ?お父さん…未来が芸能人だって知ってたの??」
「ちょっと、あなた!」
私が疑問をぶつけると
お母さんが必死にお父さんに目で訴えている。
「ぁ…いや、なんだ…その…春子が真剣にテレビ見てるから、その…見てみたら…未来くんが出てただけさ。」
……。
お父さんのウソには無理がある。
どう考えても…知らなかったとは思えない。
「…そう、なんだ…。」
微妙な空気が私を包む。
私だけに流れる疎外感。
耐えきれなくなってお肉を口に運ぶけど
なんの味もしない。
「は、春子…?」
未来が私の顔を覗き込む。
「…知ってると思った。俺が芸能界に入ってること。」
「…知らないよ…。私、うといもん。」
自分が知らなかったのは
本当に芸能関係には疎いからなのに
お父さんが知ってたことによって
未来に素っ気なく接してしまう。
「…春子…、知らなかった分、教えるから…。ごめんな?」
「…いいよ…。知らなかったのは私のせいだし。」
自分でも何がしたいのか分からないけど
あんなにも未来のことを考えてたのに
ちっとも未来のことを知らなかった。
その事実が痛い。
「春子!もぉ、暗くならないのっ!せっかくのご飯も美味しくないでしょう?」
お母さんの声がして
気持ちを切り替えなきゃって思うけど
テレビの中で笑っている未来は
本当に違う世界の人だった。
「春子、これ。」
「ん?」
未来に差し出されたのは
何かのチケット。
「何…これ」
「俺のグループのライブのチケット。今年の秋なんだけど、決まったから先に渡しとく。 知らなかった分全部見せるから。」
ドクン…
胸が高鳴るのが分かる。
「ぁ…ありがとう…」
「ほら、さっさと食べろ。明日から毎朝一緒に登校するんだから。」
「えっ??」