私の愛した未来


午後ということもあってビーチは比較的空いている。

澄み渡る空がどこまでも続いていて
すごく気持ちいい。


「うっおぉぉぉお!海キレイだな!!」


拓真くんは海に走りこんでる。


私たちも裸足になって
拓真くんに続いた。


ピチャピチャと足を濡らして歩いていく。

予想以上に冷たい水。

「冷たい…っ」

「だな。あんまりはしゃぐなよ?転ぶから。」

「こ、転ばないよっ」

未来に注意されて
慎重に歩いていると

浅瀬に泳ぐ魚がいた。


「あっ、魚っ、」

こんな近くで魚が見れると思ってなくて
近づくと、
同時に波が押し寄せてバランスを崩す。


「ぅ、わぁ…!」


転ぶっ!!

全身びしょ濡れを覚悟した瞬間。



グイッ)


私の身体に腕が巻きつく。


「ったく…転ぶって言ったばっかだろ。」

私を抱えたのは
未来だった。


「ご、ごめ…」

「制服濡らしたら怒られるぞ。」

「…いや…まさか転ぶとは…」

「アホか。」


未来の腕がしっかりと私を支えている。

引っ張られてバランスを戻すと
未来は私を見つめる。

「…やっぱアホはアホだな。」

「う、うるさいよっ…」

「お前なぁ…命の恩人にうるさいはないだろ。」

「命の恩人?!そ、そんな…」


「おい、見ろよ2人とも!!」

私たちが言い合ってる間に拓真くんが声をかける。

その目線の先には…


水平線に沈もうとする
綺麗な太陽。


ゆっくりと拓真くんと里奈に近づいて
夕陽を眺めてみる。


「…キレー…。」

みんなも思わず黙って見とれている。



「……み、未来…?」

「何?」

「た、た、助けて…くれて…ありがとう…。」


素直にお礼を言うと
未来は私を見て微笑む。

その表情にドキドキしてしまう。


「…顔、赤いけど?」

「えっ!?!」

未来に指摘されて両手で頬を隠す。

「ゆ、夕陽のせいだよ…」

「…なんだよ、それ」


とっさに夕陽のせいにして
未来には笑われたけど…



私たちは夕食の時間に間に合うように
ホテルに戻った。
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