私の愛した未来


急いで林くんの班のチェックを終えて
プリントを返す。

「は、はい。遅くなってごめん。」

「ありがと。風戸さんって柴崎くんと幼なじみなんだって?」

「えっ?」

突然 林くんの口から 柴崎 の名前が出ると思ってなくてビックリする。

「幼なじみなの?」

「あっ…う、うん…」

「へぇ…幼なじみが芸能人ってすごいね。」

「ぁ…未来は…昔から歌上手だったから…」

「…未来って…呼んでるんだ?」

「…ぅ、うん…?」

「いや、よっぽど仲がいいんだろーなぁって思っただけだよ。」


そう言って林くんは切なそうに笑う。

「お互いのチェックが終わったら今日は各自解散な!お疲れ。」

山内先生の声が聞こえて
私はハッとする。


「…じゃあ、僕はこれで。おやすみ、風戸さん。」


林くんは席を立って部屋に帰ってしまった。


なんだったんだろ…。
あの悲しそうな顔…。


私も荷物をまとめて席を立つ。


エレベーターの前で待っていると
何やらあったかい物が私の首にあたる。


「あっ、つ…」

振り返ると
そこにいたのはお茶を差し出す未来。

「み、み、未来??」

「お疲れ。」

「何してるの?こんなところで…」

「…お前、ミーティングだったんだろ。」

「ぅ…うん…そうだけど…」

「ほら、お茶。飲まないならあげないけど。」

「え!い、いる!」

未来の顔がほんのり赤い。

「ま…まさか…未来…」

「ん?」

「ま…待っててくれた…の?私の…こと…」

そう言うとその顔はさらに赤く染まる。

「べつに。」

照れて素っ気ない返事。
それも昔から変わらない。

「ありがと!」

「だから、お前を待ってたわけじゃないし。」

「…そ、それでもお茶くれたし!」

「ま、間違えて買ったんだよ。」

「素直じゃないなぁ…。」

「あ??」

しまった…心の声が…。

「なんでもないっ!おやすみ!」

「お、おいっ!」

私は逃げるようにエレベーターに乗り込んで閉じるボタンを即座に押す。


ドアが閉まりかけると
手が隙間から伸びてドアが閉まるのを阻止される。

そこから未来が乗ってきて
再びドアが閉じられた。
< 42 / 114 >

この作品をシェア

pagetop