私の愛した未来
「ず、ズルイ!!」
「何が?」
サラッとした表情で私を見つめる未来。
「ず、ズルイよ…今、言わせたでしょっ!」
「はぁ?んなことするかよ、春子が勝手に言ったんだろ。」
ムカつくーーー!
まぁ、まんまとハマったのは紛れもなく私だけど…。
「ほら、行くぞ。この先にサメがいるんだって。」
「…もぉ…話逸らしたー!」
「はいはい、早くして。」
そう言って私の腕をグイッと引いて歩く未来。
触れられているとこが熱い。
心臓が腕にあるくらい
そこがドクドクいってる。
未来に掴まれながらコースを回っていく。
「あのっ、…さ…」
「ん?」
ん?じゃないでしょ、腕!いつまで掴んでるつもりなんだろ…。
「あ、あの、う、腕…。」
「腕?」
未来の目線が私の腕にいくと
ハッと気付いたように掴んでいた手を離す。
「わり…」
「う、ううん、大丈夫…」
「……お前はほっとくとフラフラどっか行っちゃうからな。」
「なっ、い、行かないよっ!」
「ふーん、昔一緒に近所のスーパー行って迷子になったの誰だっけ?」
「…。」
そーやって、いつも昔のことを引っ張りだすんだから!
「それは昔の話でしょ!もぅ、高校生だよ?大丈夫だから。」
「…そう言ってるけど、お前今どっちに曲がろうとした?」
「へ??」
私が曲がろうとしたのは右の通路。
「右だろ?」
「うん。」
「そっちは従業員通路。出口はこっち。」
そう言って未来が指差したのは
私が曲がろうとしたところと真逆の左の通路。
「う、うそ…」
「方向音痴すぎんだろ。」
そう言って鼻で笑われる。
「…み、…う、後ろついてく…から…先歩いて?」
「俺が先歩いても迷子になるだろ?ブレザー、掴んどけば?」
そう言ってブレザーの裾を差し出される。
「…。」
「素直に掴んどけ。」
「…はぃ…。」
私は未来のブレザーの裾をしっかりと握りながら
コースを回り、水族館を出た。