私の愛した未来


「あなたたちが未来のお友達?」


突然、声をかけられてハッと我にかえる。

視線を声の方向へ向けると
さっきまで未来と親しげに話していた女性が立っていた。


「そうですけど、なにか?」

里奈が明らかに警戒して声を発する。


「いえ、未来のお友達なら挨拶をしようと思っただけですよ。」


ズキっ…

未来 って呼んでるんだ。

そう思うだけで胸が痛む。


「未来たち輝いてるでしょう?一般人とは彼らは違うのよ。」

意味深に微笑む女性。

「あっ、私は未来たちの…スプリングchildのマネージャーの佐藤明里です。よろしく。」

そういって手を差し出される。


どうしていいか分からなくなっていると、佐藤さんは私の手をパッと掴んだ。


「お名前は?」

「えっ…と…風戸…春子です…」

「春子…そぅ……風戸さんね。そちらは?」

里奈は佐藤さんを睨むように見ている。


「あっ、俺は田所拓真です。こいつは、彼女の松原里奈。」

「拓真くんに、松原さんね。よろしく。」

そう言って佐藤さんは拓真くんに微笑んで
じゃあ と言って私たちから離れていく。




「なんなの?あの人!あたし、嫌い。」

「里奈…。」

「大体マネージャーだからってあんなに未来くんの名前ばかりだす?? それに!初対面の拓真には 拓真くん で私と春子は名字なの???」


言われてみればそうだ…。
拓真くんだけ
名前呼びだった…。


「あり得ないんですけど!男だけ名前呼びとかムカつくーーー!」

「まぁ、まぁ。落ち着けって。」

「拓真もねぇ!あんな人に名前なんか教えないでよっ!」


里奈はかなり不機嫌な様子。

「春子も!イヤじゃないの??未来、未来って言われて!」

「えっ…それは…まぁ…」

イヤだけど、私がそう言える権利はないし…。




「何かあった?」


ふと振り向くと未来と他のメンバーが私たちの後ろに立っている。

「あっ、えっ…撮影は??」

「ん。ちょっと休憩。ってか、見てなかったんかよ。」

「ご、ごめ…」


「春子ちゃんやねーーー?会いたかったんよーー!」

突然、朝間さんに声をかけられる。

「えっと…あの??」

「未来が幼なじみ連れてくるってゆーてたん。イメージ通りの子やってん。あ!俺は朝間祐介!祐介って呼んでな!」


明るい表情で笑いかける祐介さん。

「お、こっちも可愛い子やね、君の彼女やろ?」

そう言って拓真くんに近づく祐介さん。

「そ、そうです…えっと…彼女の松原里奈で、俺は拓真です…」

「なんや、拓真!硬いわぁ!それに里奈ちゃん!リラックス、リラックス!」


「あ、よろしくお願いします…」

里奈がおずおずと挨拶をする。

「こいつは光!戸田光!ほら、光、挨拶しろ!」

祐介さんに連れられて前に出たのは
クールボーイで有名な戸田光くん。


「ども。光です。光でいいんで。」

「よろしくお願いします…」


一通り紹介が終わると
未来が私に近づく。

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