私の愛した未来
放課後。
私は林くんにちゃんと伝えなければいけないと思って
昇降口で林くんを待っていた。
そろそろ来る頃かな、と思った時。
林くんが目の前に現れる。
「あっ、は、林くん!」
林くんは肩をビクッとさせると
私の方を見てニコッと笑った。
「ぁ…風戸さん。どしたの?俺を…待っててくれた?」
「あ…ぅん…。」
何から話したらいいか分からなくて
こくんと頷いてそのまま俯いてしまう。
「…。」
何か言わなきゃ…。
「ぁ、あの…ね!」
「春子ーー?帰るぞー?」
声を発した瞬間、後ろから未来の声が聞こえる。
「あっ…と…。」
「…またね、風戸さん。」
「えっ、っ、あっ…」
私が一瞬未来の方を振り向いたら
林くんは歩き出してしまう。
「春子ー?帰んないの?」
「…か、帰る…」
「…大丈夫か?……林と話してた?」
「あっ、う、ううん!大丈夫!偶然会ったからちょっと挨拶しただけ!」
「ふぅーん…偶然ねぇ…。」
未来が明らかに怪しんでる。
「ま、帰るぞ。早く靴履け。」
「う、うん」
…またタイミング逃した…。
もやもやする。
何となくテンションが下がったまま
未来の横に並んで桜坂をくだっていった。