私の愛した未来


ベランダに出ると
いつもの未来がいた。


「お帰りっ!」

「ん。これやる。」

そう言って投げられたのはスプリングchildのロゴが入ったキーホルダー。


「わぁ…かわいい!新作?」

「そ。今日はグッツの打ち合わせだったから。」

「もらっていいの?」

「当たり前だろ。だからやったんだぞ」

「やった!あ、未来!未来に言わなきゃいけないことがあったんだった!」


そう言って私は部屋に戻り
今日配られた夏季セミナーのプリントを手に取る。


「はい!これ、先生から。」


「おぉ、サンキュー。」


ベランダ越しに話すのはやっぱり懐かしい。


「先生から電話で話は聞いてる。俺と春子は代表なんだって?」

「そう!あと、3組の林くんも。」

「…あー…林優也…だっけ。」

「うん。」

「大丈夫だった?今日、俺いなかったけど。」

「?大丈夫だよ??明日林くんが打ち合わせに教室に来るって。」


「いや、そーゆー意味じゃなくて…」


何やら心配そうな顔をする未来。


「大丈夫だよ?林くん頭良いから要領良く出来る人だし!」


「…そっか。…じゃ、明日な。」


「…未来…?どしたの??」


「いや、春子はお子ちゃまだから。」

「はぁ???!」

「すぐ怒るし、アホだし。」

「なっ、未来だって意地悪だ言うじゃん!自分のこと棚に上げないでよ!」

「お前は危機感がないんだよ、危機感が。」

「どーゆー意味よー。」


どーゆーわけだか言い合いが始まる。


「どーゆー意味もなにも、そのままだよ。」


「もぉ、未来は口が悪い!」

「お前は頭が悪い。」

「もういい!未来なんか知らないっ!」

「あ?なんだと?俺がいなくて寂しかったくせに。」


…。
それは、そうだけど…。


否定出来ずに黙ってしまう。


「何か言えよ。」


「……寂しかったよ。」


「え?」


< 80 / 114 >

この作品をシェア

pagetop