ケンカときどきチョコレート
「その語尾を伸ばす言い方やめて」
「えー?かわいくなーい?」
「うざいきもい」
首をかしげてふざけるその顔が整っていることに腹が立つ。なんなのよ。男なのに女よりかわいいなんてずるい。中身はただのアホのくせに。
「ひどい!おれのこときもいとか言うの、はなだけだし」
「うぬぼれんな。猫かぶってるだけでしょ」
確かに、洸太は女子に人気がある。だけどそれは、外面がいいからだ。他の女子全員をあたしと同じように扱ったら、人気なんてすぐになくなるに決まってる。
「いやいや、あれが普通だし。おまえだけは特別なの」
「あたしも普通の扱いを希望します」
「却下します」
お願いは軽く流されてしまったけれど、洸太が猫をかぶっているときには見せない、本当に楽しそうな顔で笑うから、まあいいか、なんて思えてしまう。
結局、あたしはこの笑顔に弱い。
うるさくて面倒くさいけれど、いちばんの男友達。
それが、あたしにとっての洸太だ。