ケンカときどきチョコレート
「ねえ、そういえばさ。あんた、今日いっぱいデートのお誘いがあったんじゃない?」
こんなとこでゲームしてて大丈夫なの。先週校内でいろんな女の子から話しかけられていたことをふと思い出して、次のレースを始めようとしている洸太に尋ねる。
朝っぱらからあたしの家にゲーム機持参で押しかけて来たときは、びっくりしていて聞くのを忘れていたのだ。
というより、ドアを開けた瞬間に「ゲームやろーぜ!てかやる、決定!」と宣言されて、あまりの勢いに何も言えなかった。
今更なあたしの質問に、画面に集中している洸太はうわのそらで返事をする。
「んんー。多すぎて選べなかったから、全部断った!」
あまりにもテキトーな返事にちょっと呆れてしまった。勇気を出して誘っていた子たちに、心の中で洸太の代わりに謝っておく。
「じゃあどうしてあたしの家に来たの?あたしは誘ってもいないのに」
「いや、高校生にもなって、彼氏がいないぼっちバレンタインはかわいそうだと思ってさー。寂しいだろうから、遊び相手になりに来てやったってわけ」
「ナチュラルに上から目線だね。ていうかあんたも彼女いないじゃん」
「おれは彼女ができないんじゃなくてつくらないんだ!」
「じゃああたしもそうだ」
「………」
「………」
しばらく無言でにらみあって、目線で和解が成立すると、はあっと息を吐いた。