ケンカときどきチョコレート




何でもないような顔の裏で、懸命に頭を働かせる。



ふたりで遊んだことは何度かあったけれど、こんな、しーんとした感じは初めてだ。さっきまであんなに笑い合ってたじゃん。いつもどおりのあたしとあんたで、いつもどおりの言い合いしてたじゃん。


というか、そもそも洸太は、どうしてあたしにチョコのことなんか聞いてきたんだろう。





……もしかして、




思ったときには、もう口が動いていた。


「洸太、チョコ欲しいの?」



面白いくらい肩が揺れて、図星だとわかった途端、笑いが込み上げてくる。


なーんだ。そういうことか。



「ふふっ!心配しなくても、ちゃんと洸太の分もあるよ。本当は帰るときに渡そうと思ってたんだけど」



冷蔵庫に向かいながら、洸太に話しかける。


「ケンカばっかりしてるけど、一応あんたも友達だし。いままでだって作ってたじゃん。今年だけあげないとか変でしょ」


そんな顔できくことじゃないじゃんと笑って、いちばん上の棚の隅っこにまとめて入れておいた小袋をひとつ取り出した。




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