ケンカときどきチョコレート
「………、え?あ、……え?……」
シンとした部屋に、言葉にならない声がこぼれていく。びっくりして目が点になるっていう表現、間違いなくいまのあたしにぴったりだ。
この上ないまぬけ面になっているあたしに、洸太は眉をしかめて、一言ずつ確かめるように問いかけてくる。
「だから、今年も義理チョコかよって聞いてんだよ」
「え、……あ、うん」
確かにそう聞こえたけれど。聞こえたんだけど。まだ呑み込めていないあたしは、ひきつったような返事しかできない。
というか、義理かどうかなんてどうして聞くんだ。
「義理、じゃなくて」
ふいにチョコレートから目をそらしてそっぽを向いた洸太は、ひとつ大きく息を吸って。
そして、気を付けていないと聞き漏らしてしまいそうなほどちいさな声で、あたしに大きな大きな爆弾を投げた。
「……おれはっ、…義理、じゃなくて。……特別、なのが……いい」
すきだ、と。そう言った口も、あたしを見た瞳も。ぜんぶ、知らないひとみたいで、初めて見る洸太で。
あたしはまた、動けなくなった。