ケンカときどきチョコレート
◆ ◆ ◆
ピーンポーン、ピーンポーン。
ふいにインターホンが鳴って、ゆらゆらと我にかえった。目に映った景色はまるで知らない家のようで、鈍い違和感が頭の中で渦巻く。
ピーンポーン、ピーンポーン。
「……出なくていいのかよ」
ぼーっと突っ立っているあたしを見かねて、遠慮がちにかけられた声。
「っ!よ、よくない!」
毎日のように聞いていたはずのその声は、なぜか心を震わせる。反射的に口にした言葉が裏返ったことに驚いて、心臓が跳ねた。
まばたきをしてクリアになった視界は、いつもどおりで。
だけど、浮かんでいるようなふわふわとした気持ちだけは、元の状態には戻りそうもなかった。