その笑顔反則につき。

えっと…。
絵馬くんが真里の勉強を見ていて、蘇我さんは桃田くんを教えてるから私は世緒に作文を見てもらうことにしたんだけどなぁ。


なんで私達しか教室にいないの?



蘇我さんと桃田くんは資料を探しに図書室に行ったのは見た。

絵馬くんと真里は?



真里あからさまに絵馬くん避けてたから心配だな。




「そんなに心配、須佐のこと?」



私が上の空だったからかな?
それとも顔に出てたかな?


今の世緒の表情は非常にわかりづらい。

悲しいような怒ってるような。
そんな感じ。


そりゃあ真里のことは心配だよ?
でも、世緒がおかしいのと関係はないだろうし。




「それは心配だけどそれよりも、今は世緒のほうが心配」


うまく言葉にするのは大変だけど伝えなくちゃ。
いつもの世緒に戻って欲しいから。



「私世緒になにかした?何かしたなら謝るから、いつもの世緒に戻って」



「涼香は何もしてないよ。俺がかってに嫉妬してるだけだから。…だから泣かないで」




世緒に言われてはじめて自分が泣いているのに気がついた。
私と世緒はただのクラスメートのはずなのになんで安心したんだろう。


嫌われてないと知ったら自分で自分を制御出来なくなった。



「ご、ごめん。大丈夫か?」



慌てながらハンカチを差し出す彼はいつもの世緒だった。



「うん。いつもの優しい世緒だ」




私の胸の奥にあったモヤモヤが解消された。



「…その笑顔反則」




「え?なんていったの」

  


「秘密」





世緒がぼそっと何か言ってたのが気になるけど。
今日は十分なほど幸せ。





「作文よくかけてる。さっすが!」





「あー、はい」




 
「あ!それやめてって言ったじゃん。でも今日はいいよ」




駄々こねると思ったのに今日はやたらと素直だなぁ。

くりくりした大きな目と長いまつげ。
お人形の様に整った顔は優しげな印象をあたえる。




「嘘。世緒にそう言ってもらって嬉しい」




君の向日葵みたいな笑顔はあたたかくて眩しい。 

少しずつでもこの気持ちを君に伝えていけたらいいな。








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